私たちがいち早くCADを導入した理由
現在、私たちジェムスのジュエリーはCADで元型を製作していますが
CADというと、このジュエリー業界ではあまり高級なイメージを持たれていないのが現状です。
よく言われるのが、「CADは平面的なものしか出来ないし」「低価格商品向きだよね」などというものです。
「逸品商品や、高級なジュエリーはハンドメイドでこそ作られるべき」
こういった思い込みが、依然このジュエリー業界には多いのです。
ですが、私たちは率先して高級ジュエリーの世界にCADを導入しました。
なぜなら・・・創業48年を超え、この先も歩みを止めず進んでいく私たちには大きな課題があるからです。
私たちが抱える大きな課題
それは「技術の承継」そして「感性の承継」です。
ハンドメイドの場合、その出来栄えは作る職人の技術・感性によるところがほとんどです。
熟練の職人が作り出すハンドメイドジュエリーは、芸術品の域にまで達する逸品も数多く存在しますし、そんな逸品の作りに惚れこんだ顧客も多いでしょう。
ですが、例えばその職人が引退されて、そのジュエリーのサイズ違いバージョンや大きさ違いバージョンを注文されたら・・・どうですか?
同じバランス、フォルムラインを保ちながら出来るでしょうか?
「出来ます」と言葉で言うのは簡単ですが、これは相当に難しい事案なのです。
鍛錬すれば技術は追いつくでしょうから、もちろん作れないなんてことはありません。
しかし、そのジュエリーが持つバランスやフォルムは唯一無二のもの。
別の人間が真似ても完全なる再現ができるものではないのです。
ジュエリーの「黄金比」
「黄金比」という言葉、ご存知の方もいらっしゃるでしょう。
自然界にも存在する、「人間が最も美しいと感じる比率」です。
ジュエリーの世界にも、もちろんそういった黄金比フォルムがあります。
リングの腕の絞り具合、石枠のツメの位置、ペンダントの厚み、イヤリングのカーブ具合・・・
「誰が見ても美しいと感じるフォルムバランス」というものがジュエリーにはあるのです。
そういった黄金比のフォルムバランスを見極める感覚。
その感覚を私たちは「感性」と呼んでいます。
この感性は、受け継ごうとして受け継がれるものではありません。
元々備わった感覚に左右されることがほとんどです。
先ほど申し上げたように、引退してしまった職人がハンドメイドで作った黄金フォルムのリングを、
まったく同じバランスで別の人間が再現するのは本当に難しいことなのです。
創業者の佐々木は言います。
「修行時代、見本のリングを見ながら15人の職人が一斉に同じものを作ったことがあったのだが、見事に全部ちょっとずつ違ったんだよ。」
それくらいに人の目や手はバラバラですし、感性もバラバラなのです。
求められるのは「ジェムス」としての感性
「個人」としての芸術家ならそれでも良いでしょう。
その「個人」の感性と技術をお客様は求めるのですから、バラバラならバラバラなほど、その違いには価値が生まれます。
しかし、私たち株式会社ジェムスはひとつの工房です。
お客様からは「ジェムス」としての感性と技術を求められているのです。
そこにバラつきがあってはなりません。
だからこそ、CADの力が必要なのです。
黄金フォルムのデータをCADで作り保存しておけば、同じフォルムでサイズ違いといった展開が可能です。
メインのデザインは同じまま、細かな部分にアレンジを加えることも自在です。
「技術」を受け継ぎ、「感性」は記録として残す。
高級ジュエリーこそ、CADの能力が必要であると私たちは思っています。